ないことに感じる「豊かさ」

先日、テレビ朝日系の番組「ナニコレ珍百景2時間スペシャル」にて、
野田村の「苫屋」さんが、珍百景として紹介されていました。
皆様、ご覧になりましたでしょうか?

c0259934_15535936.jpg


苫屋さんは野田でも人里離れた地区にある、
築150年の古民家を改装したお宿です。

何が珍しくて取り上げられたかというと・・・

「電話がないため、予約は手紙かはがきでする。
当日道に迷っても宿に電話はできないので、
村の人に聞くなどして自力でたどり着かないといけない。」


※詳しくは「ナニコレ珍百景」HP(珍百景NO.1468)・・・こちら
 苫屋について詳しくは・・・こちら


私も思い起こせば野田村に来る前、
村のパンフレットで苫屋の紹介文をみて
「え~!」と驚き、笑いさえ出てきたものです。
いまどきこういうところがあるんだ!と。

野田村に移住した今、苫屋さんに何か用事があるときは
基本的に直接訪問をしています。
手紙やはがきより、車を15~20分ほど走らせて
直接お会いして会話するのが、一番早いので。

慣れると、電話がないことはそこまで突飛なことでもなく、
普通のことになってくるんですね。

それに限らず、
東京から野田村にきて、いろんなものが「ない」ですが、
無いなら無いなりの生活ができるし、慣れるんだなと感じました。

そして、それを「とても豊かなこと」と、感じます。

「ない」のに、「豊か」って、どういうことかというと。

たとえば。
この村には大きなスーパーはありません。
村の中心部に小さなスーパーや商店はあるものの
営業時間に限りもありますし、
都心や街のように少し歩けばコンビニや飲食店が
溢れているような所ではありません。

食材が乏しいとき、
以前であれば時間によらず少し外へ出て買い足しに行ったり、
いっそ外食で済ませたりすることが、容易にできました。

しかし、そういう環境にない所で暮らしていると、
あるもので作ろうという意識が働くんですね。

ご近所からいただいたかぼちゃがある。
これさえあれば、煮物、コロッケ、サラダ、天ぷら…いろんなものが作れる。
かぼちゃしかない、何にもない…と思うのではなく
こんなに大きい立派なかぼちゃがある。
かぼちゃがあれば十分だ、と思える。

しかもそのかぼちゃは、近所のおばあちゃんが
野田村の美味しい空気と土と水で、丹精込めて育てたかぼちゃ。
たくさんの手がかかっていて、愛情がこもっていて、
いろんなメニューに生まれ変われる、食卓を彩ってくれる、かぼちゃ。

ただのかぼちゃだけど、ただの食材として見るのではなく
そのいろんな側面や、有難さなどに気づいたとき
「ああ、豊かだな」と感じるのです。

------------------

かぼちゃの例が果たして適切か、わかりませんが・・・(苦笑)、
きっと、苫屋さんについてもそうなのだと思います。

電話がなくても、ないなりに対応をすればいい。
予約は手紙かはがき。
そもそもここは急遽出張が決まったビジネスマンが
当日予約をするような立地にあるわけではないし、
羽を伸ばしに来る人がほとんどと思う。
しばし現実から離れ、のんびり静かに過ごせる場所。
電話がなくとも、さほど問題ない。

そして電話がないぶん、宿泊客の方々は
電話やメール・インターネット予約などの数分で済む形ではなく、
少し時間をかけて予約をすることになる。

はがきや便箋、封筒を用意する。
ペンをとる。
予約内容を書く。
季節の挨拶や余談を書き添えたりもする。
宛名を書く。
切手を貼る。
投函する。

一連の作業を経て、苫屋に届いた予約の便り。
それに答えるべく、丁寧に一通一通、返信をするオーナーご夫妻。

予約受付の返信が手元に届いたとき、
お客様にとってそれはただの予約ではなく、
それはそれは大切な「予約」になると思います。
訪れるのがきっと楽しみになることでしょう。

それはきっと、電話がない宿が生み出す豊かさの、ひとつ。

用事を伝えるために、会いに行くことも、そう。

伝えたいことを事前に整理する。
車を走らせる。
道中の山の景色が美しいと感じる。
顔を合わせる。
今日もお互い元気だと知る。
会話しながら囲炉裏の温もりを肌で感じる。
たまたま別の村の人が来ていたり、思いがけない出会いがあったりする。

電話がないからこそ
会いにいって
いろんなことを感じ、いろんなものに満たされる。

c0259934_16103713.jpg


電話やメール文化に慣れてしまっていたJターン者の私も
日々の暮らしのなかで実感し始めている、ないことの「豊かさ」。

もっと多くの人々に実感してもらえたらと、思います。
苫屋に、野田村に、来ることで。

(やまみん)
[PR]
Commented by イーハトーブの旅人 at 2012-12-27 10:39 x
ないことに感じる「豊かさ」

このタイトルが秀逸です。
イーハトーブ世界へ続く道が見えてきた。
村境が少しづつ拡がりだした。
Commented by nodakurashi11 at 2012-12-27 16:43
イーハトーブの旅人さま>
率直に書いたつもりでしたが、お褒めいただきありがとうございます^^

本当は、どこにいても感じられるものなのかもしれませんね。
たくさんの便利さや物のなかで、気づきにくいだけで・・・(やまみん)
by nodakurashi11 | 2012-12-21 16:50 | Comments(2)